生前法名・生前戒名の注意点・問題点
(浄土真宗では戒名とはいいませんが、一般的説明のため、あえて使用します。あしからず。)

 法名、戒名、法号など宗派によって呼び名や意味合いは異なりますが、これらは本来死後に付けるのでなく仏教徒としての名乗りとして生きているうちに付けるものです。生前についていない場合に手次の寺(所属寺・菩提寺)の住職がその宗門の宗主に代わりお付けします。
 その意味で生前に仏弟子としての名である法名、戒名、法号をいただくということはその宗派・寺院に属する信者さん(檀信徒、浄土真宗においては門徒又は門信徒という)にとっては正しいことであります。ところが最近新聞広告やインターネット上において、「生前に戒名を」などと称し、戒名・法名などをつけることを商売にしているところが出始めています。しかも、何宗でも付けますとしていますが、つける側に当然に各宗派の法名・戒名などを付ける権限があるわけでもなく、また付けていただいた戒名・法名を自分の宗派や所属寺院に持っていっても認められるものではありません。
また、当然にその寺院・宗派の篤信者さんたちが生前にいただいているものですので、生前戒名や生前法名があれば葬儀時の寺院費用が安く済むという性格のものでもありません。なぜなら、宗派及び所属寺(菩提寺)の護寺発展のための維持費負担の意味合いもあるので、そんなことをしたら(生前戒名・法名で所属寺維持費負担を少なくすれば)、自分の属する寺院が赤字で廃寺になってしまいます。生前戒名・法名をいただくような篤信者にはありえない事です。
 この点の注意を告知することなく、各宗派の戒名・法名の付け方に習って単に付ける(真似して付ける)だけなら誰でもできます。みなさんだって出来るでしょう。ただ、それでは宗派や寺院に記録された正式のものではなく、単なる本物に似せた偽物としか言いようがありません。
 これは、一般大衆庶民の無知に付け込んだ悪質な詐欺的行為ともいえるのではないでしょうか。確かに、各宗派とも本来、戒名・法名は死後に付ける死後の名という意味合いではなく、仏教に帰依したものの仏弟子としての名であるので、僧侶などと同様に在家者も各宗派の本山等で、授戒式、帰敬式、帰入式など式の名称は異なりますが、これらの式を受式することにより生前に本山公認の正式な戒名・法名を授かることができます。もっとも一般的には死後の名と誤解されていることも事実でありそのことは認識しています。
 また、通常各寺院とも自己の寺院に属する者を自己の仏弟子として名をつけ葬儀を行い、自己の仏弟子であるからその寺院に埋葬できることになっています。ですから、勝手に別の寺院で葬儀を行っても所属寺(菩提寺)に埋葬を許可されないのが一般的です。ししたがって、葬儀社任せで葬儀を行って、いざ所属寺(菩提寺)の墓地に埋葬しようとしたら納骨できないと言われて困っている方も都会では多いのが現状です。
(通常、檀信徒規約、門信徒規程、墓地使用規約等名称は寺院によって異なりますが、お寺と墓地使用者・檀家間での契約関係としてもその旨規定されていることが多いです。)

 さて、このサイトの管理人である僧侶の属する浄土真宗本願寺派(西本願寺)を例に取ると、本山での帰敬式受式の費用(冥加金)は成人で1万円であり、これで法名と、記念品(式章など)を貰うことができます。そして、当然に本山の宗主(門主)よりいただいた公認の法名であるから、以後宗門内のどの寺院所属が移転することがあってもこれを否定することなどありえません。なお、所属寺院には本山より受式者名簿が送付され記録されます。
 こうして、正式にいただいたものなら以後に何も問題は生じませんが、一番困るのは、生前戒名(法名)と称して、所属宗派以外の寺院・僧侶?(もっとも各宗派に属する者は他宗の戒名・法名など付けません)に付けてもらったというものです。そんなところで貰ってもそれぞれの宗派や各寺院では通用しません。中には、付け方すら滅茶苦茶であったり、その宗派では用いない漢字を使っていたりして、一目瞭然で「これはダメです」というものもあります。
 私もそんな変わった法名に霊園で出会った経験があります。浄土真宗の法名ではありえない法名が書いてあるのです。しかたなく丁寧にお話し、ご説明申し上げましたが説明するこちらも心が痛みます。
 私どもの宗派(浄土真宗本願寺派)では、門徒(檀家)さんたちも当然にご本山での帰敬式受式費用が1万円であると知っていますので、一般的には葬儀の際に法名料という概念はなく法名料というものを別にいただくことはありません。しかし、都市部にお住まいの方々でお寺と疎遠な方の中には、一部他宗派さんで戒名料というものを寺院護持のための重要な収入として予算立てしていることなどの影響で、私どもの宗派でも多額な法名料がかかるものと誤解している方がいます。確かに私どもの宗派寺院でも他宗派の影響の強い地域は檀家との合意で他宗派的な予算組みで寺院運営を行っているところもあります。
 そのような状況下で、それなら何宗でもつけますというところで事前に法名だけ貰っておけば死後の葬儀時の費用負担が安く済むと誤解なさる方がいます。しかし、どの宗派寺院でも、最低限自分の宗派寺院で付けられたもの以外認めることはできないと思います。そのような重要な点の注意を記載しないで、一般の方々がさも死後の葬儀時の費用負担が安く済むと勘違いをするのを知っていて、所属寺院から否認されるものを有料で付けているのは、非常に悪質な行為であると考えます。
 このページをご覧の皆さんも注意してください。よくよく調べてから、必ず所属寺院や本山に問い合わせてから申し込むようにしてください。

 ついでに、もう一つ、東京・横浜・大阪などの都市部では最近ご不幸があってもお寺に電話することがなく(もっともお付き合いのあるお寺が無い場合もございますでしょうが)、葬儀社さんまかせで、葬儀社さんにお寺の紹介・斡旋を頼む方がいらっしゃいますが、その場合には、どこの何という何宗何派のお寺さんなのかを良く確認された方が良いと思います。
 最近、私どもへの電話やメール相談で、葬儀社さんがつれてきたお寺さんはお葬式しかしてくれないとか、49日を頼もうとしたら来てくれないとか、どこのお寺かさえもわからないとか、あきらかに宗派が異なると本家に言われたとかいう相談があります。相談をお聞きする私もそんなお寺の名前の寺院が私どもの宗派には無かったり、付けられ法名もちょっと首を傾げたくなるものであったりしますので、ゲスの勘繰りかも知れませんが、正式な坊さんが葬儀を執行したのではないのではないか? とも疑いたくなることがあります。現実に2006年には報道のあったとおり、東京、神奈川、埼玉、千葉の4都県で営業の準大手上位の葬儀社が「お布施装い所得隠し、買収宗教法人使う葬儀会社」(報道タイトルの一例)として、葬儀の読経の仕事を紹介で受け取るリベートを葬儀社が買収した三つの葬儀社支配の宗教法人に御布施などの名目で所得を移して摘発を受けています。
 お世話になる葬儀社さんへの依頼とは別に、寺院僧侶は田舎の寺から紹介してもらうなり、本山・別院に問い合わせるなどして寺院の手配はご自分で行う方が賢明(賢明というよりは本来はそのほうが正しい)です。葬儀社さんが紹介料と称してお寺等が受け取った御布施(皆さんが出した御布施)の何割かをもっていってしまうなんていう話も聞いたことがありますし、最近は葬儀専門派遣会社とかもあったりします。葬儀社の社員の方が読経しているというような偽者さんのうわささえも耳に入ります…。もっとも、インターネットを行っている皆さんの場合、Web上である程度は確認できることも多いでしょうが、現実にはネット上では派遣・斡旋会社や葬儀専門寺院と思しきものが俄然ヒットしてしまいますのでネット上の情報も真偽を確認する注意深さが必要と存じます。(当方にも本願寺派の寺院名簿がありますので当方でも確認が出来ます。) また全寺院をある程度調べることが出来る(私が拝見した限り、完璧ではありません。)「■これが日本のお寺だ」というWebサイトがあることを御存知でしょうから、ここで調べても良いです。
 御存知のない方の為に■これが日本のお寺だ[ココをクリック]

なお、これまた現実の問題として、戦後の人口移動に伴う都市部の人口集中で、周辺人口増加で既存の寺院はすでに檀家で満杯のため新規の受け入れが出来ないということもあります。人口は数倍に増えていますがお寺はそんなに増えていません。皆さん方でお金を出し合って造らない限りお寺は出来ないのであります。また、都市部は土日に法事が集中するため、土日に法事が無く空いている寺院はほぼ皆無に近く、土日にまたがる葬儀等は地元の寺院で対応することは困難な状況も現実としてあり、このことが葬儀専門などと言われるようにどの宗派にも属さない何でも屋の拝み屋さんと揶揄される方達がはびこる原因の一つとなっていると推測できます。
 よく「マンション坊主」などという言葉を聞きますが、これも偽者の僧侶から過疎化で寺院維持が困難な地方寺院の本物の住職、また寺院の次男三男等の寺院子弟等までさまざまであり、ことに浄土真宗では寺院の次男三男等の寺院子弟の多くは寺院に居住していないのがごく当たり前でありますので、すべて「悪」というイメージは的確ではないと思います。


法名や戒名は、自分の宗派・所属寺から



 最後になぜ都市部ではお葬式に伴う寺院関係費(御布施)が高いのか、私見を述べさせていただきます。
 お寺というものは、そこのあるだけで本山の賦課金をはじめ本堂の維持管理、住職等の給与等の必要経費がかかります。会社と同じで必要な支出に見合う収入が予算だてられています。これらの予算は、檀家さんの代表者数名と共に協議し毎年定められます。会社と違うのは、別に儲けて利益を出す必要がないことです。もちろん予算以上の収入があれば次期に繰り越したり、積立金に回したりして後の檀家さんの負担軽減に還元されることになります。その意味では町内会館の維持管理と同じであります。

 上記を読んで腹立たしく思ったり、矛盾を感じる方も多くいらっしゃると思います。私自身非常に矛盾と葛藤を感じます。多くの僧侶、住職もそのように感じる者は多いと思います。そもそも「御布施」(寄付金)であって、その時の精一杯の気持ちであって、金額などいくらでも良いものであるべきです。ただこれは僧侶に対して言えることであって、お寺を預かっていない一人の仏教僧侶としては、そうあるべきであり、それで良いのであります。しかしながら、寺院を預かる住職(寺院経営者)という立場を持っているとそうは行かない事情が発生します。(それでは寺が維持できない。潰れかねない。)
 もっとも住職は、宗教法人から給与をいただくいわばサラリーマンでありますので、源泉徴収され会社員と同様に、会社員と同収入なら同額の所得税を払っているし、御布施をたくさん貰っても個人の所得は1銭も増えないのであって(一般に誤解が多いようですが)、本来御布施の金額などどうでも良いように思いますがお寺が潰れるほど収入が無いのでは、自分の給与も出ませんのでやはり困ります。(宗教法人は会社で言う法人所得税は非課税ですが、坊さん個人が貰う個人所得には当然に皆さんと同額の所得税がかかります。間違えないでね。(~o~))
 一人の僧侶としては、たとえ1万円しか払えないという今まで縁の無い方であっても、そんなことに関係なくお葬儀でもなんでも行ってあげたいと思うところですが、寺を預かる住職の場合、檀家さんは自分達のためにいるのが住職と思っていますから、「なんで自分達より安く」とか「そんなことされたら困る」とか「そんなことしてたら寺が潰れる」とか言われてしまいます。つまり僧侶であるという面を表に出す住職が決して良い住職と評価されない現実があり、住職は寺院経営者という立場と皆のために少しでも役に立とうとする僧侶としての立場との葛藤に悩みます。まあ、これが一般的な住職の苦悩であり、この悩みから逃れるために「檀家さん以外はお受けしません」という寺院が生じたり、他方お寺を持たずに一人の僧侶として活動しようとする者が生じてきます。
 皆さんも特に都市部では、苦悩の末、この2通りの坊さんがいることを知っていてください。お寺と付き合うのか、それとも一人の人間としての坊さん個人と付き合うのかと言ったほうがわかりやすいかも知れません。
後者の場合、当然お寺ではありませんので、お骨を預かったり、お墓を用意したり、本堂で法事なんてことは出来ません。一長一短があるのです。私自身現在のあり方が最善なのか否かいつも悩んでいます。



さて、浄土真宗(本願寺派)の法名のいただき方についてご紹介いたします。
法名をいただくには、原則として本山にて「帰敬式」を受けていただくことになります。
帰敬式の申込みは所属寺院と相談の上、所属寺院を通じて行ってください。受式後所属寺院に受式の旨本山から通知されます。また、帰敬式は宗門で定める儀式の一つですので真宗門徒としての作法・しきたりをわきまえたうえで受式ください。
帰敬式(おかみそり)
 帰敬式は、浄土真宗の門徒として、仏祖に帰敬の誠をあらわし、仏弟子として念仏をよりどころとして人生を生きる決意を新たにする儀式で「おかみそり」ともいわれています。帰敬式は原則としてご本山にて、ご門主さま(またはお手代わりの方)により執り行われ、三帰依文を唱え、親鸞聖人のお得度にならい「おかみそり」を受け、仏弟子としての名「釋○○」という法名をいただきます。
釋は釋尊のお弟子の意味で、浄土真宗では戒名とは申しません。
受式記念の式章は、門徒であることをあらわす章ですので、自覚と誇りを持って法要や仏前の儀式または同信同行の会合には襟に掛けて参加してください。また、受式記念の「浄土真宗必携」はぜひ目を通し、宗門が展開している基幹運動(門信徒会運動・同朋運動)をはじめ、ひろく報謝の実践にいそしんでください。
 受式時間は、毎日晨朝後と午後1時30分(ただし、本山恒例法要の日などの中止日や時間変更があります。受式冥加金は、成人1万円、未成年5千円です。)
本願寺派(西本願寺)の帰敬式受式案内は参拝教化部[ココをクリック]
です。
 なお、近年メールの相談で多い誤解が、生前に帰敬式を受式して法名を受けておくと葬儀の際の御布施等の寺院費用が安く済むというような誤解です。所属寺への維持費の分担的意味合いですから法名を先につけようが後から付けようが費用負担は変わりません。寺院維持費という支出が決まっているのに皆さんが御布施を少なくすれば、維持費不足で結局その分寄付金依頼がいくかその寺院が赤字で廃寺になるだけなので、そもそも葬儀費用を安くするという発想が誤りです。逆に生前法名を受けるほどの篤信者さんということですから寺院の護寺意識、本山護寺の思いが強いのが一般的で、葬儀のお布施も一般の門信徒より多くてもおかしくありません。



<関連リンク>「一般社団法人 仏教情報センター」ココをクリック




なお、俗名で葬儀を済まされた方でそのまま故人様が俗名のままの方は可能な限り今からでも法名をお受けすることをお勧めします。所属寺院のある方は所属寺院にご相談ください。もっとも俗名でご葬儀というのは所属寺院さんの無い方や葬儀社主導でのご葬儀の方と思いますので、その場合霊園や公営墓地等に埋葬又は埋葬予定だと思います。特にお寺と縁のない方等特別なご事情で、今からでも法名を受けたいとお考えの方は御遠慮なくトップページ又は下記よりメールにてご相談ください。
なお、ご相談メールには必ず墓地の状況(寺院墓地・何宗でも良い霊園・公営墓地等の別)、ご葬儀をされた寺院の状況、代々の菩提寺の状況等をお書きください(それによってアドバイス等が異なります。寺院墓地の場合には当該寺院でお付けしなければ納骨が出来なくなるのが一般的です。)。
現在お寺とご縁のある方は、他で法名をお付けすることにより無用なトラブルが生じることがあります。従いまして個別事情をお聞きしませんと問題が無いかどうかの判断が出来無いことがあります。その場合メール対応は困難ですので、電話でお話をお聞かせいただくことになります。




ホームトップへ戻る


念仏の声を 世界に 子や孫に

<!葬儀の際の注意!> 墓地が何宗でも良い霊園や公営墓地ではなく、寺院墓地の場合には、原則としてどんなに遠方でも当該寺院(所属寺)から法名をいただき当該所属寺院から葬儀の手配をしてもらわなければなりません。同じ宗派だからと安易に他の寺院や葬儀社寺院で葬儀を行いますと、最悪、納骨が出来ないケースに発展し所属寺院とのトラブルに発展しますのでご注意ください。
離壇処分で現在のお墓の撤去を求められることもありえます。
み教えは 生きる私の 羅針盤