<特集> 浄土真宗における年賀欠礼は?


 年末につき、良くいただく質問ですので特集とさせていただきます。
「喪中につき・・・・」毎年何枚かいただく年賀欠礼のおハガキいただきですが、「なんで?」なんて考えたことはございますでしょうか?
 忌服の習俗というものは、地方によっても異なりますが、「忌」という、死を穢れとみなして忌 むということですから、本来、仏教的なものではありません。
 ただ、以前は、法律(明治7年太政官布告『服忌令』)で義務付けられていたことも あり(昭和22年に廃止され、現在忌中・喪中期間の規定はありません。)、習慣的に仏事慣習として現在の日本ではかなり一般化しています。
 しかし、現在では『服忌令』にあったように父母13か月、妻90日、嫡子90日、養子30日、兄弟姉妹90日などと続柄によって分けていた習慣は消えつつあり、続柄にかかわらず概ね1年と考えている方が多くなりつつあります。

 さて、浄土真宗ではこのような場合どうすればとのご質問が多いのですが、これといった決まり はありません。したがって、死を穢れとみなす忌服の習俗を否定する意味からも、まったく気にせ ずに年賀状を出す方もいらっしゃいます。(私もそうでしたが)
ただ、年賀状のお付き合いのある知人の方々が浄土真宗のこのような考え方を御理解いただけるわ けでもありませんし、他宗の方々もたくさんいらっしゃることでしょう。あえて、私の 家は浄土真宗だから年賀欠礼の葉書は出さないと我を張り、世間との摩擦を生じさせ る必要もないと思います。
 ご提案といたしましては、 良く用いられるあいさつ文を多少変えて、 浄土真宗に相応しくない「他界」とか「服喪中」などの用語を避け、「喪中だから新 年の挨拶を失礼する」でなく、「○月に○が往生し、はじめて迎える正月は、○を偲 びつつ家族で静かに迎えたいと思いますので、新年の挨拶は失礼させていただきま す」との旨のお葉書をお出しになられればよろしいのではないでしょうか。

決まった答えがありませんので、私なりのご提案でございます。
なお「他界、永眠、天寿」などは耳触りが良く、多用されがちですが、仏教的な意味合いの用語ではありませんので用いません。
また、余談ですがよく年賀欠礼の文例で、「喪中につき年頭の御挨拶を御遠慮申し上げます。」と書かれているものを見かけますが、「遠慮」というものは、こちらがするものであって、「御遠慮」と丁寧語で書きますと相手方に「遠慮しろと」「申し上げている(言っている)」ことになります。「御遠慮申し上げます」は「(こちらが)遠慮いたします」の意味ではなく「(相手に)御遠慮下さい」の意味になってしまいます。 もし、自分が年賀の挨拶を遠慮する意味であえて書くなら、「年賀の御挨拶は遠慮させて頂きます」とすべきですので、それなら「新年のご挨拶を失礼させていただきます」、「新年のご挨拶は失礼させていただきます」の方が良いと思います。
以下の文例が御参考になれば幸いです。

(一般向け文例1)

母の命終後(または死去後)はじめて迎える正月は、
母を偲びつつ家族で静かに迎えたいと思いますので、
新年のご挨拶を失礼させていただきます。

なお、今年中賜りましたご厚情を厚くお礼申し上げ 明年も変わらぬご交誼のほどお願い申し上げます。


(注:”逝去”は、他人の死に対する尊敬語なので身内には用いません)
(一般向け文例2)

新年のご挨拶を失礼させていただきます

9月に母が往生し、はじめて迎える正月は、母を偲びつつ
家族で静かに迎えたいと思いますので、新年のご挨拶は失礼
させていただきます。
なお、時節柄一層御自愛のください。

(より浄土真宗的文例)

死亡した旨の表現を
・母がお浄土に還った後(○月に母が阿弥陀さまのお浄土に還り)
・母の還浄後(○月に母が還浄後)
・母が浄土往生の素懐を遂げた後(母が○月に浄土往生の素懐を遂げ)
・母がお覚りの座の人となった後
などとします。

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          ちなみに「太政官布告」の「服忌令」では

       【 故人の続柄 】  【 忌日数 】   【 服喪日数 】
         ───────────────────────────
         父母         50日        13ヶ月
      ──────────────────────────────
         養父母        30日         150日
      ──────────────────────────────
         夫          50日        13ヶ月
      ──────────────────────────────
         妻          20日         90日
      ──────────────────────────────
         嫡子         20日         90日
      ──────────────────────────────
         養子         10日         30日
      ──────────────────────────────
         兄弟姉妹       20日         90日
      ──────────────────────────────
         祖父母(父方)    30日         150日
      ──────────────────────────────
         祖父母(母方)    30日         90日
      ──────────────────────────────
         曾祖父母       20日         90日
      ──────────────────────────────
         孫          10日         90日
      ──────────────────────────────
         おじ・おば      20日         90日
      ──────────────────────────────
         夫の父母       30日         150日
      ──────────────────────────────
         妻の父母       なし         なし
      ──────────────────────────────
         従兄弟・従姉妹    3日          7日
      ──────────────────────────────